この度NordicNinjaは、スタートアップやテックエコシステムに関する世界有数のデータベースを運営するDealroomと共同で、日本企業と欧州スタートアップ投資の最前線をまとめたレポート『Japan – Europe: A Rising Tech Alliance』を発表しました。2019年以降、日本から欧州スタートアップへの投資額は累計330億ユーロに到達、欧州の全ベンチャーキャピタル投資の6%に関与していることになります。
レポート概要:
- 2024年以降、日系資本*は、欧州における全ベンチャーキャピタル投資の6%に関与しており、2024年だけでも35億ユーロ相当のディールに参加しました。2025年は10月時点で24億ユーロが投資されており、
- 2024年の総額35億ユーロのうち、70%がディープテックおよびAI分野に向けられました。これは2023年の2倍の比率です。
- 地域別では、英国スタートアップへの投資が2019年以降の累計330億ユーロのうち149億ユーロと最多となっており、2024年だけでも25億ユーロを占めています。次いでドイツが48億ユーロ、フランスが34億ユーロとなっています。
- 日系資本は、ソフトバンク主導のメガディール中心から、より多様なセクターやプレーヤーによる初期段階の投資件数の増加へとシフトしています。
- 欧州スタートアップ**と日本の大手企業の間での戦略提携事例も複数の業種で見られます。
レポート本編:https://dealroom.co/reports/japan-europe-a-rising-tech-alliance
中核をなすディープテック
2024年の投資総額のうち、70%がディープテックおよびAI分野に向けられました。これは2023年比で倍増です。レジリエンス関連分野も全体の23%を占めるまでに成長しています。
また、かつてのソフトバンクを中心とする大型ディール主体の構造から脱し、総合商社、ベンチャーキャピタル、事業会社など、より多様なプレーヤーの投資が見られます。日系資本が関与した資金調達ラウンドの件数は2022年比で5.9%増加し、2024年には140件に達しました。初期および成長段階のディール件数も2024年に過去最多を記録し、この傾向は2025年も続いています。
最近の事例としては、バッテリーリサイクルを手がけるtozero社への1,100万ユーロのシード投資(NordicNinja、日揮ホールディングス、本田技研工業)、ゼロエミッション配送を展開するHIVED社への3,800万ユーロのシリーズB投資(NordicNinja、ヤマトホールディングス、丸の内イノベーションパートナーズ)などが挙げられます。これらの投資は、日本が掲げるサプライチェーンの強化、産業競争力の向上、低炭素経済への移行促進といった戦略的優先課題と一致しています。
投資から事業開発まで
日本企業は欧州スタートアップへの投資のみならず、買収やパートナーシップ面でも積極的な動きを見せています。2023年には日本企業による欧州スタートアップの買収件数が過去最高の15件を記録しました。2025年にはこの件数が8件に達する見込みで、2024年の2倍に相当します。
同時に、欧州のイノベーションをグローバル規模へと展開する協業も加速しています。レポートではモビリティ、ロボティクス、創薬、量子コンピューティング、エネルギー、宇宙関連技術などの分野での協業事例を取り上げています。
(注)
日系資本*:日本企業からの直接投資、および日本資本をLPに持つファンド経由の投資
スタートアップ**:ベンチャーキャピタルからの出資を受けている企業
NordicNinja マネージングパートナー 宗原智策のコメント
気候変動や安定的なサプライチェーン確保、産業のデジタル化など大きな社会課題に取り組む欧州スタートアップ。それら多くのイノベーションは、エネルギー安全保障の確保、産業競争力の強化、低炭素経済への移行の加速といった日本にとっての戦略的優先事項と重なります。ヨーロッパの起業家精神と、日本の産業力が融合することで、グローバルに成長できる強靭な体制が生まれます。NordicNinjaは、その橋渡しを担い、国境を越えた協働を長期的なインパクトのあるイノベーションへとつなげていきます。
NordicNinja投資先 Varjo CEO ティモ・トイッカネンのコメント
ヨーロッパはディープテック・イノベーションが形になる場所であり、 日本はそのイノベーションを精密さとスケールによって実行力に変える場所です。Varjoにとってこの両者をつなぐことは、現代の防衛部隊の任務遂行能力の向上と、ミックスド・リアリティによる訓練方法の変革を意味します。
NordicNinja投資先 tozero 共同創業者兼CEO、サラ・フライシャーのコメント
「日本は他のどの国よりも、バッテリーや循環型サプライチェーンの戦略的重要性を理解しています。日本の投資家とのパートナーシップは、私たちに資金だけでなく、深い産業知識と、持続可能なテクノロジーをスケールさせるうえで欠かせないアジア市場への架け橋をもたらしてくれます。