欧州最大規模の日系ベンチャーキャピタルNordicNinjaは、スウェーデンのAIスタートアップRedpineが実施した総額680万ユーロのシードラウンドにリード投資家として参画したことをお知らせいたします。本ラウンドには、Luminar Venturesおよびnode.vc(いずれもストックホルムを本拠地とするベンチャーキャピタル)も参加しています。
本資金調達により、Redpineはグローバル展開を加速します。そのために、同社の創業メンバーでありデータサイエンティストであるLeonora Vesterbackaが開発を主導する独自の検索、再順位付け技術の高度化などを含め、同社プラットフォームの開発を一層加速させます。また世界をリードするAI研究機関との連携も強化します。さらに主要産業おける高付加価値な非公開データへのアクセスを確保するため、データ保有者とのデータパートナーシップの拡大にも資金を充当します。
Redpineは、エンジニアリング、データサイエンス、市場進出戦略(go-to-market)領域での採用も強化します。同社のコアメンバーは、Spotify、SanaLabs、Zettle、Lunarといった北欧を代表するテックユニコーン企業に加え、McKinsey、CERN、H&Mといったグローバル企業で経験を積んだ人材で構成されています。NordicNinjaのジェネラルパートナーであるMarek Kiisaも同社取締役として参画します。
本ラウンドには戦略的エンジェル投資家として、Silo AI共同創業者Peter Sarlin、Validio共同創業者Patrik Tran、Sana共同創業者Anna Nordell Westlingなど欧州を代表するAI企業の創業者に加え、OpenAI、Perplexity、Spotify各社のリーダー層も出資しています。
AIにおける「データギャップ」の解消
現在、AI学習に利用できる公のデータは、世界全体のデータ量のわずか1〜2%にとどまっています。Redpineはこの「AI情報ギャップ」を解消するために、2024年、Anders HammarbäckとDavid Österdahlにより設立されました。データ保有者との提携を通じて、信頼できる非公開でプレミアムなデータをコンプライアンスに則って提供することを目指します。既に世界を代表するAI研究機関や米国のバイオテクノロジー企業AsedaSciencesとの連携を果たしています。
元ベンチャーキャピタルのパートナーであるAndersは、多くのAIスタートアップがインターネット上でスクレイピングされた同じデータに依存しており、競争優位性や精度、それにデータ保有者への対価が欠如している点に課題を見つけました。Spotifyの創業期メンバーであったDavidは、音楽業界においてレコードやCDの売上減少や海賊版の問題からストリーミングモデルへの転換を実現した経験を持ち、両領域の構造的類似性に着目しています。
Redpine CEO兼共同創業者 Anders Hammarbäckのコメント
「Redpineは、トークンベースのエージェント経済がすべてのステークホルダーにとって持続可能な成長をもたらすためのインフラを構築しています。この分野の可能性は極めて大きく、臨床ガイドライン、判例、研究論文、金融市場データ、高品質なニュースなど幅広い領域での活用が期待されます。」
Redpine CPTO兼共同創業者 David Österdahlのコメント
「私たちは根本的な課題を突き止め、エージェントデータの強固なアクセスモデル構築のための科学的ソリューションを開発しています。音楽業界で見られたように、海賊版的なスクレイピング経済は一時的なものに過ぎず、やがて持続可能な仕組みに置き換わります。Redpineはその解決策です。」
NordicNinja ジェネラルパートナー Marek Kiisaのコメント
「エージェント型AIの性能は学習データの質に依存しますが、現状では世界の知識の大半がAIにとってアクセス不可能な状態です。経験に裏付けされた優れた実行力を伴うAIネイティブなチームで、Redpineはエージェント型AI時代の基盤企業になることを確信しています。」
プラットフォーム概要
Redpineは、AI企業およびAIエージェントがプレミアムデータを横断的に検索・活用できるヘッドレス(API型)プラットフォームを提供しています。特に科学分野のデータに重点を置いています。
AIエージェントはRedpineのModel Context Protocol(MCP)を通じてクエリを送信し、Redpineが文脈を評価した上で最適なデータを提供します。利用料金はトークンベースの従量課金制で、データの品質はリアルタイムで評価されます。この仕組みにより、AIエージェントはコンプライアンスに準拠しながら、より高精度なデータに基づいて機能できるようになります。
市場環境
AIは実験段階から実用段階へ移行し、AIエージェント市場は急速に拡大しています。McKinseyは2030年までにエージェントコマースが最大5兆ドルの小売売上を創出すると予測し、BCGは同年までにテックサービス市場においてエージェント型AIが2,000億ドルの付加価値を創出するとを見込んでいます。
医療、法務、ニュース、金融といったミッションクリティカルな分野では、「それなりに良い」データでは不十分であり、正確性、出所の明確性、権利遵守が不可欠です。複数ステップでタスクを処理するAIエージェントにおいては、わずかな不正確さが重大な誤りを引き起こす可能性があります。
同時に、出版社などのデータ保有企業は、無断スクレイピングや著作権問題を背景に流通モデルの転換を迫られています。AI企業に対する著作権訴訟の高まりを受け、新たな収益機会としてエージェント型AIへの対応が進んでいます。
Copyright Clearance Centerの事業開発担当マネージングディレクターであるRoy Kaufmanは 次のように述べています。「AIがその潜在能力を最大限に発揮するためには、高品質なデータと、それを生み出したクリエイターや権利者への公正な対価の両方が必要です。Redpineはこの両者を実現する存在です。」
Redpineはすでに米国、欧州、アジアにおける顧客およびデータパートナーと連携しています。同社のデータパートナーであるCheggのCFO、David Longoは次のように述べています。「Redpineは当社の市場展開を拡大する理想的なパートナーです。高品質なコンテンツの適正な価値を確保しながら、イノベーションの機会を共に創出しています。」
NordicNinjaは、世界におけるエージェント型AIの高度かつ公正な発展のために、日本のデータ保有者とのパートナーシップ促進など、Redpineの今後の事業展開を支援してまいります。